フラットな見た目が特徴の陸屋根は、デザイン性やスペースの有効活用が可能などの点で人気があります。
しかしその反面、一般的な傾斜屋根に比べて雨水がたまりやすく、雨漏りが起きやすい構造です。
特に防水層の劣化や排水不良などが重なると、天井からの浸水や建物内部の腐食につながるおそれがあります。
この記事では、主に次の3点を解説します。
- 陸屋根が雨漏りしやすい理由や代表的な原因
- 緊急時の応急処置方法
- 修理にかかる費用の相場と費用を抑えるための具体策
被害を最小限に抑えたい方、防水対策を検討中の方はぜひ参考にしてください。
陸屋根は雨漏りしやすい2つの理由
陸屋根は見た目がすっきりしている反面、雨漏りリスクが高い構造です。
傾斜がないため水はけが悪く、さらに屋根材による保護がない点も影響します。
以下ではその理由を2つに分けて解説します。
- 陸屋根には傾斜がないため雨漏りしやすい
- 陸屋根には屋根材がなく防水を防水層のみで保護しているため
順に説明します。
理由その①陸屋根には傾斜がないため雨漏りしやすい
陸屋根の最大の特徴は、屋根にほとんど傾斜がないことです。
この構造上の特性により、雨が降った際に屋根の上に雨水がとどまりやすくなります。
通常の傾斜屋根であれば、雨水は自然と流れ落ちますが、陸屋根では排水口へ流れるまでに時間がかかるため、屋根全体が長時間にわたって雨水にさらされる状態になります。
その結果、表面の防水層が徐々に劣化しやすくなり、防水機能が低下して雨漏りを引き起こす原因になるのです。
理由その②陸屋根には屋根材がなく防水を防水層のみで保護しているため
一般的な屋根には「瓦」や「スレート」などの屋根材が使われており、雨水の侵入を一次的に防ぐ役割を担っています。
しかし陸屋根の場合、こうした屋根材による保護が施されておらず、建物を守っているのは防水工事で形成された防水層のみです。
この防水層が劣化したり破損したりすると、そのまま建物内部に雨水が浸入してしまいます。
つまり陸屋根は屋根材のない構造ゆえに、雨水の影響を直接受けやすく、雨漏りリスクが高まるのです。
陸屋根が雨漏りしやすい4つの原因
陸屋根で雨漏りが発生する原因は、防水層の劣化だけではありません。
排水口の詰まりやパラペットの破損など、複数の要因が絡んで雨水の浸入を招いています。
代表的な4つの原因を紹介します。
- 防水層の劣化や破損
- 排水口周辺の詰まりや割れ
- パラペットの劣化や破損
- 建物の構造自体の異常
順にみていきましょう。
防水層の劣化や破損
陸屋根の雨漏り原因でもっとも多いのが、防水層の劣化や破損です。
防水層は、紫外線や風雨にさらされることで、年数が経つにつれてひび割れたり剥がれたりします。
特に、メンテナンスがされずに放置されている場合には、劣化が進行し、雨水が建物内部へと浸入しやすくなります。
防水層は唯一の防御壁ともいえる存在であり、ひとたび損傷が生じると、すぐに雨漏りのリスクが高まるでしょう。
排水口周辺の詰まりや割れ
陸屋根に設置されている排水口(ドレン)は、雨水を効率よく屋根外へ排出する重要な設備です。
しかし、落ち葉や砂埃などが詰まってしまうと排水が滞り、屋根上に雨水がたまりやすくなります。
その結果、防水層に負荷がかかり、劣化を早めてしまう原因になるのです。
また、排水口周辺のコンクリートに亀裂や欠けが生じると、すき間から雨水が染み込み、構造内部へ浸入するおそれがあります。
パラペットの劣化や破損
パラペットとは、陸屋根の周囲に設けられている低い立ち上がりの壁を指します。
画像引用元:株式会社翔和公式ホームページ
見落とされがちな部位ですが、この部分にひび割れや防水処理の不具合が生じると、雨水が壁内部を伝って屋内に浸入してしまいます。
特に古い建物では、パラペットの内部に雨水が溜まりやすく、防水処理の再施工や補修が必要になる場合も少なくありません。
防水層だけでなく、パラペットも定期的に点検し、異常があれば早急な対応が必要です。
建物の構造自体の異常
防水層や排水設備、パラペットに明らかな不具合が見当たらない場合、建物そのものに原因が潜んでいる可能性があります。
特に陸屋根の勾配が不十分で排水がうまく機能していない場合、水たまりができやすくなり、雨漏りの原因となります。
このようなケースでは、勾配を是正する「改修用勾配調整工事」や、既存の屋根上に新しい屋根をかぶせる「カバー工法(屋根かぶせ工事)」などの抜本的な対策が必要です。
専門業者と相談のうえ、適切な工法を選びましょう。
雨漏りした場合のDIYによる3つの応急措置方法
突然の雨漏りにすぐ業者を呼べない場合、自分でできる応急処置が役立ちます。
ここでは、DIYでできる対策を3つ紹介します。
状況に応じて使い分けることで被害の拡大を防ぎましょう。
- ブルーシートで屋根全体を覆って雨水の浸入を防ぐ
- 防水テープでピンポイントに雨漏り箇所を塞ぐ
- コーキング材ですき間を充填して浸水を防止する
順に説明します。
①ブルーシートで陸屋根からの雨漏りを防ぐ
雨漏りが発生した際、すぐに屋根全体を保護できる手段としてもっとも手軽なのが「ブルーシート」です。
ブルーシートは水を弾く素材でできており、応急的に雨水の浸入を防ぐには有効です。
ホームセンターやネット通販で、手軽に費用も安価で入手できます。
使用時は雨漏りが疑われる箇所よりも広めにシートを広げ、雨の方向も考慮して屋根の上をしっかり覆います。
固定には養生テープやガムテープを使い、さらに上から土嚢袋や重しになるものを置けば、風による飛散防止が可能です。
ただし、屋根に上る作業は転落などのリスクをともなうため、無理はせず、安全に配慮したうえでおこないましょう。
②防水テープで雨漏りの箇所を塞ぐ
雨漏り箇所がある程度特定できる場合には、防水テープを使った応急処置が効果的です。
防水テープは高い耐水性を持ち、屋外の使用にも耐えられる製品が多く、ホームセンターやネット通販でも手軽に購入できます。
使い方は簡単で、テープを必要な長さに切り取り、雨漏りが生じている箇所やひび割れ部分にしっかりと貼りつけるだけです。
シートと違って屋根全体を覆う必要がなく、ピンポイントで対処できるのが利点です。
ただし、強風や降雨中の施工は粘着力が落ちやすいため、貼り付ける前に対象箇所の水分を拭き取るなどの下準備をしっかりおこないましょう。
応急処置とはいえ、適切に対応すれば、室内への被害拡大を抑える効果が期待できます。
③コーキング材で雨漏りの原因箇所を埋める
コーキング材を使った応急処置は、雨漏りの発生箇所が明確にわかっている場合に有効な方法です。
コーキング材とは、すき間やひび割れを埋めるためのペースト状の補修材で、ホームセンターなどで1,000円前後から購入が可能です。
施工の際は、まず原因箇所の汚れや水分をできる限り拭き取り、乾いた状態でコーキング材をしっかりと充填します。
均一に塗り広げて密着させることで、雨水の侵入を防ぐ効果が高まります。
ただし、屋根表面の広範囲にわたる劣化や、防水層の下部に異常があるケースでは、コーキングでは対応しきれません。
あくまで一時的な処置としておこない、根本的な修理は専門業者への依頼が重要です。
応急処置の範囲を見極めて、安全第一で対策を進めましょう。
陸屋根の雨漏り修理の費用相場
陸屋根の雨漏り修理にかかる費用は、被害の範囲や工法によって大きく異なります。
軽度な補修で済む場合は数万円で対応できることもありますが、防水層の再施工など大がかりな工事になると、20万~100万(1平米あたり3,000円〜1万円)円程度が相場です。
特に防水層の劣化が進んでいる場合は、既存の防水層を撤去したうえで全面的にやり直す必要があるため、費用は高くなります。
また、雨漏りが内部構造まで達していると、補修工事に加えて内装や断熱材の修復費も発生します。
費用を把握するには現地調査が不可欠で、見積もりは複数業者から取るのがおすすめです。
なお、防水工事はその種類によって施工単価が変わるため、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】陸屋根の防水工事の種類と費用を抑える方法・防水効果を長持ちさせるポイントを解説
陸屋根の修理費用を安く抑える3つのポイント
陸屋根の修理にはまとまった費用がかかるため、なるべく費用を抑えたいと考える方も多いでしょう。
ここでは、費用を抑えるための現実的な対策を3つ紹介します。
- 火災保険を利用して自己負担を軽減する
- 補助金・助成金制度を活用する
- 定期的なメンテナンスで劣化を未然に防ぐ
順にみていきましょう。
ポイント①火災保険を使って修理する
陸屋根の修理費用を大幅に抑えられる手段の1つが「火災保険」の活用です。
火災保険は火災だけでなく、台風・大雪・雹(ひょう)などの自然災害による被害も補償対象に含まれる場合があります。
雨漏りの原因がこれらの災害によるものであれば、保険金を使って修理できる可能性がありますが、適用には以下の条件が必要です。
- 規定された自然災害による被害であること
- 被害発生から3年以内の申請が必要
- 修理にかかる損害額が免責金額を超えていること
ただし、経年劣化による雨漏りは対象外なので注意が必要です。
保険会社や代理店に事前確認し、必要書類や写真をそろえて申請を進めましょう。
ポイント②補助金や助成金を活用する
修理費用の負担を軽減する方法として有効なのは、国や自治体の補助金・助成金の活用です。
例えば、国が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、一定の要件を満たした住宅の防水改修に対して補助金が支給されるケースがあります。
また、自治体によっては、省エネリフォームや防災性の向上を目的としたリフォームと同時に雨漏り修理をすれば、助成金が利用できる場合もあります。
制度の詳細や条件は自治体ごとに異なるため、事前に公式サイトや窓口での確認が必要です。
なお、補助金・助成金を利用して陸屋根の防水工事を検討している方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
【関連記事】陸屋根の防水工事の種類と費用を抑える方法・防水効果を長持ちさせるポイントを解説
ポイント③陸屋根の定期的なメンテナンス
修理費用を抑えるもっとも堅実な方法は、日頃からの定期的なメンテナンスです。
陸屋根は構造上、雨水が滞留しやすく、排水不良や防水層の劣化が進行しやすい傾向にあります。
しかし、定期的に点検や簡単な手入れをすれば、雨漏りに至る前に問題を早期発見し、被害を最小限に抑えられます。
例えば、排水溝(ドレン)に溜まった落ち葉やゴミを定期的に取り除くことで排水性能の維持が可能です。
また、防水層のトップコートを5年ごとに塗り替えれば、紫外線による劣化を抑え、耐用年数を延ばすことにもつながります。
メンテナンスに多少の費用はかかりますが、結果的に大規模な修理を避けることができ、総費用を大幅に抑える効果が期待できるでしょう。
日頃より必要な陸屋根の雨漏り対策
陸屋根の雨漏りは、一度発生すると修理費用が高額になるケースも多いため、日頃からの対策が重要です。
まず基本となるのが、定期的な清掃です。
落ち葉や土埃が排水口にたまると排水が滞り、水たまりができて防水層の劣化を早めます。
少なくとも年に1~2回は、排水溝まわりの清掃をおこないましょう。
また、防水層の寿命は10~15年程度とされていますが、より長持ちさせるには10年を目安に防水工事を見直すことが推奨されます。(使用されている防水工法によって異なります)
特にトップコートの塗り替えを5年ごとに実施すれば、防水効果を維持しやすくなります。
こうした予防的なメンテナンスが結果的に雨漏りの発生を防ぎ、大規模修理を避けることにつながるでしょう。
陸屋根の雨漏りでお悩みの方は、防水工事の専門家株式会社翔和へお任せください。
陸屋根は構造上、傾斜がなく防水層だけで雨を防ぐため、雨漏りが発生しやすい屋根形状です。
万が一の雨漏りには応急処置も可能ですが、根本的な解決には専門的な調査と防水工事が欠かせません。
被害を最小限に抑えるには、定期的な清掃や早めのメンテナンスが重要です。
陸屋根の雨漏りでお困りの方は、防水工事の専門家である株式会社翔和にぜひご相談ください。
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