陸屋根とは、都市部の住宅やビルに多くみられる傾斜がない「平らな屋根」のことです。
陸屋根は、屋上庭園や防水層を設けるために使われることもありますが、平らであるがゆえに雨水が溜まりやすく、漏水のリスクを抱えています。
そのため、定期的な防水工事が必要であり、適切な防水処理を施さないと、屋根材が劣化したり、漏水による建物の構造への影響が出たりする可能性があります。
この記事では、陸屋根に必要な防水工事の種類、費用を抑える方法、防水効果を長持ちさせるためのポイントについて紹介するのでぜひ参考にしてください。
陸屋根の防水工事の種類と特徴
陸屋根の防水工事には主に「シート防水」「アスファルト防水」「塗膜防水」の3種類があります。
それぞれの防水方法には特徴があり、目的や予算、建物の状態に応じて最適な選択が必要です。
工法 |
特徴 |
耐用年数(目安) |
費用の目安(1平米あたり) |
適している屋根の形状 など |
シート防水 |
塩ビシートやゴムシートを張り付けて防水層を形成する |
約10~20年 |
5,000~7,000円 |
屋上が平坦でシンプルな形状 |
アスファルト防水 |
熱で溶かしたアスファルトを積層して防水層を作る |
約15~25年 |
5,500~8,000円 |
大型ビルや工場など耐久性を重視する建物 |
塗膜防水 |
防水塗料を塗布する方法 |
約8~15年 |
4,000~8,000円 |
屋上に段差や配管など複雑な形状が多い |
順にみていきましょう。
シート防水
シート防水は、専用シートを陸屋根の床面に貼って防水する方法です。
工事費用や維持費が安価で、耐用年数が10〜20年と長いためコストパフォーマンスに優れています。
この工法は、平坦な屋根に向いており、多くの陸屋根で採用されています。
しかし、設置物が多い特殊な屋根や風が強い高層ビルなどには不向きです。
シート防水には、塩化ビニールシート防水とゴムシート防水の2種類があります。
それぞれの特徴は下表のとおりです。
種類 |
費用の目安(1平米あたり) |
耐用年数 |
工期 |
特徴 |
塩化ビニールシート |
3,500~7,500円 |
10~20年 |
1~4日 |
耐久性が高く紫外線に強いが、断裂しやすい |
ゴムシート |
2,500~7,500円 |
10~15年 |
1~4日 |
柔軟性が高く地震に強いが、耐久性は劣る |
それぞれのシートには特徴があり、屋根の条件や予算に応じた選択が重要です。
アスファルト防水
アスファルト防水は、溶かしたアスファルトとアスファルトルーフィングシート(※)を重ねて施工する方法で、防水工事のなかで最も歴史の長い工法です。
※屋根の防水性を高めるために屋根材の下に敷かれるシート状の建材
高い防水性能を誇り、多くの公共施設やマンションに使用されています。
メンテナンス回数を少なくしたい方に向いており、耐久性が高い一方で、重量があるため木造住宅には適していません。
アスファルト防水には主に、高熱で溶融したアスファルトを使う「熱工法」トーチバーナーを使って施工する「トーチ工法」、常温で施工する「常温工法」があります。
それぞれに特徴があり、施工場所や条件によって最適な方法が選ばれます。
工法 |
費用の目安(1平米あたり) |
耐用年数 |
工期 |
特徴 |
熱工法 |
約7,800円 |
15~25年 |
6~10日 |
硬化が早く、工期の短縮が可能だが熱や煙が発生する |
トーチ工法 |
約8,200円 |
15~20年 |
6~10日 |
安全性が高いが細かい部分の施行には不向き |
常温工法 |
約8,900円 |
15~20年 |
6~10日 |
火を使わず施工可能だが、費用が高くなる |
アスファルト防水はその高い防水性と耐久性から、特に大規模な施設や長期的な防水対策を必要とする建物に最適です。
塗膜防水
塗膜防水は、液体状の防水塗料を塗布して防水層を形成する方法です。
耐用年数は約8〜15年ですが、重ね塗りが可能で、メンテナンスが簡単で、かつ安価に済みます。
細かい部分にも対応できるため、エアコンの室外機周辺や複雑な形状の陸屋根にも最適です。
塗膜防水には、ウレタン防水とFRP防水の2種類があり、それぞれに特徴と用途が異なります。
ウレタン防水は、費用を抑えられ、広く使用される一方で、仕上がりに職人の技術が影響します。
FRP防水は、短期間で施工が可能で、ベランダや人が多く出入りする場所に適していますが、施工費用がやや高めです。
工法 |
費用の目安(1平米あたり) |
耐用年数 |
工期 |
特徴 |
ウレタン防水 |
4,000~6,500円 |
8~10年 |
約1週間 |
費用を抑えやすいが職人の技術に差が出やすい |
FRP防水 |
4,000~8,000円 |
10~15年 |
1~2日 |
短期間で施工可能だが、費用が高め |
塗膜防水は、比較的低コストで施工でき、柔軟な対応力を持つため、細部までカバーしたい場合に有効な方法です。
陸屋根の防水工事のタイミングを見極める8つの症状
陸屋根は通常の屋根と比べて、傾斜による雨水の逃げ場がないため雨水が溜まりやすく、基本的には5〜10年ごとに防水工事をするのがおすすめです。
陸屋根の劣化の症状ごとの補修の緊急度合いは下表のとおりです。
症状 |
工事が必要な緊急度合い |
コケの発生 |
急な工事依頼は不要 |
排水溝の詰まり |
急な工事依頼は不要 |
雑草の繁殖 |
工事が必要 |
ひび割れやチョーキングの発生 |
工事が必要 |
水たまりが消えない |
工事が必要 |
雨シミや雨漏りが発生 |
早急に工事が必要 |
防水層の浮き・膨れ・めくれ |
早急に工事が必要 |
陸屋根床面の破損 |
早急に工事が必要 |
順にみていきましょう。
①コケの発生
陸屋根にコケが生えるのは、湿気が溜まりやすい環境であることを示しています。
ただし、コケ自体はまだ防水層に大きな影響を与えていないため、この段階では急いで工事を依頼する必要はありません。
コケを取り除くことで一時的に改善できますが、湿気が溜まりやすい状態は変わらないため、定期的な確認をして、問題が進行しないよう注意を払いましょう。
②排水溝の詰まり
排水溝が詰まると、雨水の流れが悪くなり、屋根に水が溜まりやすくなります。
しかし、詰まりを解消すれば一時的な問題は解決します。
この段階では急いで工事をする必要はありませんが、詰まりを放置すると、屋根全体の防水性能に影響を及ぼし、さらに悪化する可能性があるでしょう。
定期的な清掃や点検が必要です。
③雑草の繁殖
陸屋根に雑草が繁殖すると、防水層に穴が開いたり、ひび割れが生じたりする原因となります。
雑草が生えるということは、屋根に浸透した水が溜まりやすい状態を意味します。
この段階では、工事が必要だと判断されることが多いです。
雑草の根が屋根材を突き破ってしまうと雨漏りの原因となる場合もあるため、雑草を見つけたら自分で取り除かずに業者へ相談しましょう。
④ひび割れやチョーキングの発生
ひび割れやチョーキング(白い粉が表面に現れる現象)は、防水層が劣化している証拠です。
これらの兆候が見られる場合、防水層が機能しなくなる恐れがあるため、工事が必要です。
早期に対応すれば問題が深刻化する前に修繕が可能ですが、放置しておくと屋内に雨水が漏れ込むリスクがあります。
⑤水たまりが消えない
雨が降った後、屋根に水たまりができて消えない場合、防水層に問題があることが考えられます。
水が溜まり続けることは、漏水や腐食を引き起こす可能性があるため、この段階では工事が必要です。
水たまりが解消されないままだと、建物の構造にも影響を与えかねませんので早期の修繕をしましょう。
⑥雨シミや雨漏りが発生
雨シミや雨漏りが発生している場合、防水層の損傷が進行している証拠です。
放置すると、建物内部に重大な影響を与える可能性があるため、即座に点検・修理が必要です。
特に、雨漏りは建物の構造や内部に深刻なダメージを与えるため、対応を急ぎましょう。
⑦防水層の浮き・膨れ・めくれ
防水層が浮いたり膨れたりしている場合、内部に水分が入り込んでいることを示しています。
この場合は、早急な工事が必要です。
防水層が剥がれてしまうと、建物に水が浸入し腐食やカビの原因となるため、早期に修理を依頼しましょう。
⑧陸屋根床面の破損
陸屋根の床面に破損が見られる場合、すぐに工事を依頼する必要があります。
破損部分から雨水が浸入し、建物内部に深刻な影響を与える可能性が高いため、迅速な修理が求められます。
屋根の構造に問題が生じていることも考えられるため、専門家による点検と修繕を急ぎましょう。
陸屋根の防水工事の費用を抑える4つの方法
陸屋根の防水工事費用は、適切な方法を選べばコストの削減が可能で、さらに防水層を長持ちさせられます。
費用を抑える4つの方法を紹介します。
- 相見積もりを取る
- 自社で施工している会社に依頼する
- 閑散期に工事を依頼する
- 国や自治体の補助金・助成金を活用する
順に説明します。
相見積もりを取る
防水工事を依頼する際、複数の業者から相見積もりを取ることは重要です。
複数の業者から見積もりを取得すれば、価格や提供されるサービス内容の比較が可能になり、最も適切な業者を選べます。
見積もりを取れば、業者の価格設定に対する理解が深まり、相場を把握できます。
また、相見積もりを依頼すれば、業者に競争意識を促し、価格交渉が可能になる場合もあります。
業者の信頼性や実績を確認しつつ、費用を抑えるための最適な選択が大切です。
自社で施工している会社に依頼する
防水工事をおこなう際に、自社で施工を手掛けている会社に依頼すれば、費用を抑えられるでしょう。
中間業者が関与しない分、中間マージンが発生せずコストが抑えられる可能性が高いです。
自社施工をおこなっている業者は、施工に関するノウハウや信頼性が高く、工事の質も保証される場合が多いです。
ただし、業者選定の際には、過去の実績や評判をよく調べ、信頼できる業者を選びましょう。
信頼できる防水工事業者の選び方をより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】シート防水の耐用年数(寿命)は?屋上・ベランダの防水を長持ちさせる秘訣を解説!
閑散期に工事を依頼する
防水工事の費用を抑えるために、閑散期を狙って工事を依頼するのも1つの方法です。
建築業界では、特定の季節に仕事が集中するため、その時期は料金が高くなることがあります。
閑散期(通常、秋や冬などの施工が少ない時期)に工事を依頼すれば、工事費用を抑えられる可能性も少なくありません。
業者は繁忙期に比べて、閑散期に仕事を確保したいため、料金の交渉がしやすくなる場合もあります。
また、閑散期には業者が時間に余裕を持って施工できるため、仕上がりにも余裕を持たせられるでしょう。
国や自治体の補助金・助成金を活用する
陸屋根の防水工事をおこなう際、国や自治体が提供する補助金や助成金を活用する方法があります。
多くの自治体では、住宅の耐震性や防水性を向上させるための助成金制度を設けており、工事費用の一部を補助してくれる場合があります。
補助金や助成金を利用できれば、予算内でより質の高い防水工事が可能となるでしょう。
【補助金・助成金の一例】
実施している自治体 |
補助金・助成金の内容 |
屋根全面の遮熱塗装を条件に工事費用の10%を助成 ・上限15万円:戸建て・事業所 ・上限30万円:分譲マンション |
|
屋根の高反射改修(屋根塗装、葺き替え、カバー工法)に対し1住宅あたり10万円を補助 |
|
屋根の改修工事(税抜き20万円以上の工事費が条件)に対し、工事費の5パーセントに相当する額(上限10万円)を補助 |
助成金の申請方法や対象となる条件は自治体によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
陸屋根工事の防水効果を長持ちさせるポイント
陸屋根の防水工事を施した後、その効果を長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスといくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
陸屋根工事の防水効果を長持ちさせるポイントは、以下の3つです。
- 排水溝の清掃
- トップコートの定期的な塗り替え
- 室外機や植物の設置を避ける
順に説明します。
排水溝の清掃
排水溝は、雨水を速やかに屋根から排出するための重要な部分です。
排水溝が詰まっていると、雨水が屋根に溜まり、湿気や水漏れの原因になります。
定期的な排水溝の清掃をおこなえば、水の流れがスムーズになり、防水層の劣化を防げます。
特に落ち葉やゴミが溜まりやすい秋や冬は、こまめな清掃が大切です。
排水溝の詰まりを放置すると、雨水が滞留し、屋根や防水層に負担をかけてしまうため、定期的な点検をしましょう。
トップコートの定期的な塗り替え
トップコートは、防水層を保護するための重要な役割を果たしますが、長期間使用していると、紫外線や風雨による劣化が進み、トップコートが剥がれたり、色あせたりします。
定期的にトップコートを塗り替えることで、防水層の劣化を防ぎ、屋根を長持ちさせられるでしょう。
一般的に、5〜10年に一度はトップコートの塗り替えが推奨されています。
また、トップコートを塗り替える際には、専門業者に相談して、適切な塗料を選びましょう。
トップコートの費用は、施行する面積や種類、業者によって異なりますが、一般的に1平米あたり1,000〜2,500円が相場です。
室外機や植物の設置を避ける
陸屋根に室外機や植物を設置すると、防水層に直接的な負担がかかる場合があります。
室外機が屋根に設置されている場合、振動や重みが防水層に影響を与え、ひび割れや損傷の原因となるケースがあります。
また、植物の根が防水層を突き破ることもあり、長期的にみて屋根に対するリスクが高くなるでしょう。
室外機や植物の設置場所は慎重に選び、防水層への影響を最小限に抑えることが、防水効果を長持ちさせるポイントです。
陸屋根の防水工事に関するよくある質問
ここでは、陸屋根の防水工事に関するよくある質問を、3つ紹介します。
- 陸屋根の防水工事をDIYでやってもいい?
- 防水工事をする周期は?
- 結局どの工事がいいの?
順にみていきましょう。
陸屋根の防水工事をDIYでやってもいい?
陸屋根の防水工事をDIYでおこなうことは可能ですが、注意が必要です。
防水工事は専門的な技術を要する作業であり、特にシート防水やアスファルト防水などは専門業者に依頼するのが一般的です。
DIYでおこなう場合、施工の精度が低ければ、後に雨漏りや劣化が進行する可能性があります。
また、材料選びや施工方法を誤ると、防水層が十分に機能しなくなることもあるため、経験がない場合は専門家に依頼する方が安全です。
特に、高所作業や天候に関わる部分は、プロの業者に任せることをおすすめします。
防水工事をする周期は?
防水工事の周期は、使用する材料や施工方法によって異なります。
一般的な各工法ごとの目安となる耐用年数は下記のとおりです。
- ウレタン防水や塗膜防水は10年程度
- シート防水は15年前後
- アスファルト防水は20年前後
屋根の状態や気候条件によって、実際の寿命は前後します。
定期的にチェックをおこない、ひび割れや水たまり、劣化が見られた場合は早めに工事を検討しましょう。
また、メンテナンスや再塗装をすれば、寿命を延ばせます。
定期的な点検と、適切なタイミングでの防水工事が必要です。
結局どの工事がいいの?
陸屋根の防水工事には、シート防水、アスファルト防水、塗膜防水の3種類があり、どの工法を選ぶかは、屋根の状態や予算、耐久性を考慮して決められます。
防水工事の種類 |
主な特徴 |
シート防水 |
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アスファルト防水 |
|
塗膜防水 |
|
予算や用途に合わせて最適な工法を選ぶことが、防水効果を最大化するポイントです。
まとめ|陸屋根の防水でお悩みの方は防水の専門家「翔和」にご相談ください
陸屋根の防水は、劣化が進むと建物に深刻なダメージを与える可能性があるため、早期の対応が重要です。
防水の専門家「翔和」は、確かな技術と最長15年の保証で陸屋根の防水工事をおこなっており、経験豊富なスタッフが、最適な施工方法と信頼性の高いサービスを提供いたします。
防水に関してお困りのことがあれば、ぜひ翔和にご相談ください。