シート防水加工済みの雨漏りの原因と対策を解説!知っておくべき修理費用や予防策も紹介

マンションの屋上や陸屋根で採用されるシート防水は、高い防水性能を発揮しますが、経年劣化や環境要因により雨漏りが起きる場合もあります。

特に「すでにシート防水済みなのに雨漏りしている」と悩む方は少なくありません。

この記事では、シート防水に関するトラブルの主な原因や応急処置の可否、修理費用の目安、修理にかかる日数などを解説します。

また、密着工法と機械的固定工法の違いや、雨漏りを防ぐための日常的なメンテナンス方法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

シート防水加工済みの屋上や陸屋根で起きる雨漏りの4つの原因

シート防水加工済みの屋上や陸屋根で起きる雨漏りの4つの原因

シート防水を施していても、雨漏りが発生するケースは少なくありません。

ここでは代表的な4つの原因をあげ、それぞれの特徴と注意点を解説します。

  • 紫外線や熱による劣化
  • シートの剥がれ
  • 飛来物の衝突や鳥獣による被害
  • 藻・コケ・カビなど植物の発生

順にみていきましょう。

紫外線や熱による劣化

もっとも多い原因の1つが、紫外線や熱による経年劣化です。

特にマンションの屋上や陸屋根は、日射の影響を直接受けやすい構造であるため、真夏の高温や冬場との寒暖差が繰り返されることでシートの柔軟性が低下します。

これにより表面にひび割れや硬化が生じ、そこから雨水が浸入してしまうのです。

シートの種類にもよりますが、塩ビやゴムなどの素材は約10~20年が耐用年数とされており、それを過ぎた場合は防水性能が大きく低下します。

日常的に屋上に上がる機会が少ない場合でも、定期的な点検をおこない、色あせやひび割れが見られた時点で専門業者に相談しましょう。

シートの剥がれ

施工後の経年や接着不良によってシートが浮いたり剥がれたりすると、防水層としての役割が大きく損なわれます。

特に「密着工法」で施工されている場合、下地との接着力が弱まると水が内部へ侵入しやすくなり、雨漏りに直結します。

また、剥がれた部分が強風に煽られれば、さらに広範囲へと損傷が拡大してしまう恐れもあるため注意が必要です。

表面だけでなく、端部や立ち上がり部分の浮きも雨水の侵入口となります。

こうした劣化は見た目ではわかりにくいケースも多いため、プロによる打診検査(※)や赤外線調査などの定期点検を受けることが早期発見のカギです。
※ハンマーなどで叩いて音の違いで異常を発見する検査

飛来物の衝突や鳥獣による被害

シート防水は突き刺しや引っかきに対してはそれほど強くありません。

台風や強風時に飛んできた枝やゴミ、あるいは鳥獣が爪でひっかいたり、フンによって化学的なダメージを与えたりすれば、部分的に破れが生じることがあります。

一見小さな傷でも、そこからじわじわと雨水が浸入すれば、屋根下地や建物内部にまで影響を及ぼしかねません。

また、動物が巣を作ることで排水経路が詰まり、シート上に水たまりが発生し、荷重によって接着面が剥がれる原因にもつながります。

防水層の破れに気付いたら応急処置を早急におこない、早めに専門業者への修理依頼が大切です。

藻・コケ・カビなど植物の発生

水はけが悪い屋上では、藻やコケ、カビなど植物の発生も雨漏りの一因になります。

これらは見た目が悪いだけでなく、根がシートの微細な隙間に入り込み、防水層を破壊する恐れがあります。

特に長期間放置された場合、雨水の通り道ができてしまい、目に見えない内部劣化を引き起こすことも少なくありません。

また、植物の成長により排水口が詰まり、シートに常に水が溜まった状態となれば、接着面に負荷がかかり剥がれやすくなります。

予防のためには、定期的な清掃と、防水層に異常がないかの確認が重要です。

雨漏りを見つけたらどう対処すべき?

雨漏りを見つけたらどう対処すべき?

雨漏りは発見が遅れるほど被害が拡大しやすく、補修費用も増えてしまいます。

正しい初期対応を知っておくことで、建物の劣化を最小限に抑えられるでしょう。

ここでは、DIYの応急処置や避けるべき行動、専門業者に相談すべき理由について整理します。

  • 応急処置はDIYでもできる?
  • 絶対にやってはいけないNG行動
  • まずは専門業者に点検を依頼しよう

順に解説します。

応急処置はDIYでもできる?

結論からいうと、雨漏りの応急処置を自分でおこなうのはおすすめできません。

一時的な応急処置であればDIYでも可能ですが、あくまで「緊急対応」として考えるべきです。

例えば、室内に雨が漏れてきた場合はバケツや防水シートで受け止めたり、屋上に上がってシートの破れ箇所に防水テープを貼ったりする対策です。

ただし、屋上は滑りやすく、素人が作業すると転落や怪我のリスクがともないます。

加えて、防水層の構造を理解していないまま処置すると、逆に雨水の経路を変えてしまい、被害を広げる可能性も否定できません。

あくまで被害の拡大を防ぐためのつなぎ対応としておこない、できるだけ早く専門業者へ依頼しましょう。

絶対にやってはいけないNG行動

雨漏りを発見した際、慌てて無理な処置をしたり、原因を自己判断で決めつけるのはNGです。

よくある誤った行動の1つに、市販のコーキング材でシートのひび割れを無理に埋めてしまうケースがあります。

これは一見応急処置にみえても、素材の相性や伸縮性の違いから逆に剥離や膨れを招く恐れがあります。

また、素材の相性を考慮せずに防水層の上から新たに防水塗料を塗るのも避けるべきです。

下地の状況を無視した処理では密着不良が起きやすく、見えない場所で水が回り込み、建物の構造にダメージを与えかねません。

正確な対処には「原因の特定」が不可欠です。

不安な場合は無理に触らず、業者による点検を待ちましょう。

まずは専門業者に点検を依頼しよう

雨漏り対策でもっとも確実な方法は、信頼できる防水業者による点検です。

プロは目視や打診、赤外線カメラなどの専用機器を使って、表面だけではわからない「隠れた浸入口」まで正確に特定できます。

原因が判明すれば、破れ部分のパッチ補修や、端部シールの打ち替え、必要に応じて全面改修など適切な処置が可能です。

また、応急対応だけで済むか、将来的な再施工が必要かという長期的な視点でのアドバイスも得られます。

点検だけなら数千円~1万円前後で対応する業者も多いため、早めに相談すれば安心できます。

自力で無理に対応する前に、まずはプロに相談しましょう。

シート防水の雨漏り修理の費用相場

シート防水の雨漏り修理の費用相場

雨漏りの範囲や防水層の状態によって費用は大きく変動します。

部分補修と全面改修でこれまでの実績に基づく目安をご紹介します。

  • 部分補修の費用目安
  • 全面改修の費用目安

それぞれみていきましょう。

部分補修の費用目安

部分補修は小さな破れや剥がれに限定しておこなう簡易的な工事です。

相場は、軽微な補修なら5万円前後から、中規模の部分補修だとおおよそ10〜30万円前後となるケースが一般的です。

また、下地処理に含まれるルーフィング補修やシートの小修理は、5〜30万円程度で収まることもあります。

ただし、部分補修を繰り返すうちにコストが蓄積されるため、被害拡大が予想される場合は、初期段階での全面修理検討も推奨されます。

全面改修の費用目安

全面改修では、防水シートの張り替えを含む全層の再施工になります。

シート防水の施工単価は1平米あたり約5,000〜7,500円とされ、平米数に応じて総額が積み上がります。

例えば100平米の屋上なら、材料・施工・撤去・下地処理・廃棄物処理などを含めて、おおむね120万円前後が目安です。

広範囲になると200万円近くになるケースも珍しくありません。

さらに、足場設置には別途20〜30万円が加算される可能性があると認識しておきましょう。

また、雨漏り修理は火災保険の対象となる場合があります。

台風やゲリラ豪雨などにより雨漏り被害が生じた場合は火災保険が適用されるケースがあるため、加入している火災保険の証書や保険会社のホームページなどで確認しましょう。

シート防水の雨漏り修理にかかる時間はどのくらい?

シート防水の雨漏り修理にかかる時間はどのくらい?

雨漏り修理の所要時間は、工事の規模や下地の状態、天候によって大きく異なります。

ここでは「簡易補修」と「全面改修」に分けて、おおよその目安と注意点を紹介します。

  • 簡易補修なら半日~1日
  • 全面改修なら2日~1週間以上かかる場合も
  • 梅雨や繁忙期は予約が取りづらい点にも注意

順にみていきましょう。

簡易補修なら半日~1日

軽度な破れや剥がれなど、小規模な部分補修であれば、作業時間はおおよそ半日から1日程度で完了します。

例えば、シートの剥離箇所に接着剤を再塗布するだけ、あるいはパッチを貼るような施工であれば、晴天時の午前中に始めて夕方には完了するケースがほとんどです。

ただし、現地調査や資材の準備が別日に必要になることもあるため、事前の打ち合わせで工事日数を確認しておくと安心です。

また、乾燥時間が必要な補修材料を使用する場合は、日をまたぐ可能性もある点に注意しましょう。

全面改修なら2日~1週間以上かかる場合も

防水シートの全張替えを含む全面改修では、施工面積や使用工法に応じて2日~7日程度の工期が見込まれます。

例えば、100平米未満の屋上であれば2〜3日程度で完了する場合もありますが、下地の劣化が激しい場合や既存防水層の撤去に手間がかかるケースでは、1週間以上かかることも少なくありません。

密着工法よりも機械的固定工法のほうが乾燥工程が少なく、比較的工期が短縮される傾向がありますが、天候や人員体制によっても左右されます。

施工前にスケジュールの詳細確認をおこないましょう。

梅雨や繁忙期は予約が取りづらい点にも注意

工事を依頼するタイミングにも注意が必要です。

特に梅雨時期や台風シーズン、または年末の繁忙期は、防水工事の依頼が集中しやすく、予約が1〜2カ月先になることも珍しくありません。

さらに、雨天が続くと作業が延期される可能性もあるため、スケジュールが不安定になりがちです。

急を要する雨漏り修理であっても、信頼できる業者の都合にあわせる必要があります。

そのため、可能であれば春や秋の乾燥した時期に予防的なメンテナンスをおこない、トラブル発生を未然に防ぐことが理想です。

工事を依頼するタイミングにも注意しましょう。

シート防水がマンションの屋上や陸屋根に適している理由とは?

シート防水がマンションの屋上や陸屋根に適している理由とは?

シート防水は、さまざまな建物で採用されますが、特にマンションの屋上や陸屋根との相性がよい防水工法です。

ここでは、その理由を4つの観点から整理してご紹介します。

  • 広い面積に適している
  • 施工が早く工期が短縮できる
  • 安定した防水性
  • メンテナンス・補修がしやすい

順にみていきましょう。

広い面積に適している

マンションの屋上や陸屋根は、一般住宅よりも広大な面積を有するのが特徴です。

シート防水はロール状の素材を敷き詰めるため、広範囲の施工に向いており、継ぎ目も最小限で済みます。

特に、塩ビシートやゴムシートは柔軟性が高く、端部や突起物周辺にも対応しやすいため、面積が大きい現場でも効率的な施工が可能です。

広さゆえにコストもかかりがちですが、シート防水は他の工法と比べて単価が比較的安価で、コストパフォーマンスにも優れています。

施工が早く工期が短縮できる

シート防水は、あらかじめ工場で規格化されたシートを貼り付ける方式のため、施工期間を短く抑えられます。

特に既存防水層の撤去が不要な場合は、作業がわずかな日数で完了する場合もあり、居住者への影響を最小限にとどめることができます。

また、乾燥時間を要する塗膜系の防水とは異なり、天候の影響を受けにくい点もメリットの1つです。

結果として、短期間での防水対策を必要とするマンション修繕において、シート防水は有効な選択肢となります。

安定した防水性

シート防水は、均一な厚みと工場での品質管理によって、安定した性能が保たれている点が強みです。

塗膜防水のような「職人の腕」に左右されにくく、施工後の防水層のムラや厚み不足などのリスクを減らせます。

さらに、塩ビシートやゴムシートは紫外線や熱への耐性が高く、屋上のような過酷な環境下でも長期間性能の維持が可能です。

一定のメンテナンスをおこなうことで、10年以上の防水性能が期待できるため、マンションの大規模修繕のタイミングにも適しています。

メンテナンス・補修がしやすい

シート防水は部分的な補修が容易な点でも優れています。

万が一シートに破れや剥がれが生じた場合でも、問題の箇所だけを切り取り、パッチ材で補修できるため、全面張り替えに比べて費用と工期を抑えられます。

また、劣化の進行具合が視認しやすく、定期点検時にも問題箇所を特定しやすい点がメリットです。

維持管理のしやすさは、長期的に建物を管理するマンションにとって、大きな安心材料です。

防水工法の違い|密着工法と機械的固定工法の比較

防水工法の違い|密着工法と機械的固定工法の比較

シート防水には主に「密着工法」と「機械的固定工法」の2種類があり、それぞれ施工方法や耐久性が異なります。

  • 密着工法とは?
  • 機械的固定工法とは?
  • 雨漏りしにくいのはどっち?

順にみていきましょう。

密着工法とは?

密着工法とは、防水シートを専用の接着剤で下地に直接貼り付ける施工方法です。

下地との密着性が高く、風によるめくれや浮きが起こりにくいため、比較的コストを抑えながら安定した防水性を実現できます。

特に屋上の立ち上がり部分や狭いスペースに適しており、工事の自由度も高い点が特徴です。

ただし、下地に湿気がある場合や経年による膨れが起きやすい点には注意が必要です。

また、既存防水層の状態が悪いと接着力が発揮されにくく、剥がれや雨漏りにつながることもあります。

そのため、下地処理の丁寧さと職人の技術力が仕上がりに大きく影響します。

機械的固定工法とは?

機械的固定工法は、防水シートを専用のアンカーやディスク板などで物理的に固定する方法です。

下地との固定に接着剤を使用せずに施工できるため、下地が湿っていても作業可能で、下地からの影響を受けにくいのが大きな利点です。

特に断熱材の上に施工する「断熱絶縁防水工法」では、この方法が採用されるケースが増えています。

また、将来的なメンテナンスや張り替えがしやすく、シートの膨れや剥がれなどのトラブルも起きにくいです。

ただし、風荷重の強い地域や高層建築では、アンカー部分の処理を慎重におこなう必要があります。

さらに、材料費と工事費は密着工法よりやや高めになることも理解しておきましょう。

雨漏りしにくいのはどっち?

雨漏りのリスクを抑えたい場合には、「下地の状態」と「建物の条件」によって最適な工法を選ぶことが重要です。

例えば、比較的新しい建物で下地が健全な場合は密着工法でも十分な効果を発揮します。

一方、古い建物や下地の劣化が進んでいる場合は、下地の影響を受けにくい機械的固定工法の方が雨漏りリスクを低減できます。

さらに、湿気の多い環境や断熱材の上に施工する場合も、密着より固定工法の方が適しているとされます。

結論として「どちらが雨漏りしにくいか」は一概にはいえず、建物の構造や環境、予算、メンテナンスのしやすさなどにより判断されるでしょう。

雨漏りを防ぐためのメンテナンスと予防法

雨漏りを防ぐためのメンテナンスと予防法

シート防水は施工して終わりではなく、定期的な点検と適切な予防があってこそ性能の維持が可能です。

ここでは、雨漏りを未然に防ぐために取り組むべき3つの具体策をご紹介します。

  • 10年を目安に点検・再施工を検討しよう
  • 定期的なドレン清掃・排水確認をしよう
  • 信頼できる業者をみつけよう

順に解説します。

10年を目安に点検・再施工を検討しよう

シート防水の耐用年数は、ゴムシートで10〜15年、塩ビシートで10〜20年とされています。

しかし、耐用年数の上限まで使い切るのではなく、10年を目安に一度専門業者の点検を受けるのが理想的です。

なぜなら、目に見えない内部劣化や接着力の低下は、自覚症状がないまま進行しているケースも多いからです。

定期点検で問題がみつかれば部分補修で済む場合もありますが、劣化が進行している場合には再施工が必要になる場合があります。

被害が出る前に先手を打つことが、結果的に建物を長く守る最良の対策となります。

定期的なドレン清掃・排水確認をしよう

屋上や陸屋根における雨漏りは、防水層の破損だけが原因とは限りません。

ドレン(排水口)の詰まりによって水たまりができ、シート防水層に長時間水が溜まることで、接着力が弱まり剥がれや浸水のリスクが高まります。

特に落ち葉や砂埃、鳥の巣などが詰まりの原因になりやすく、定期的な清掃が欠かせません。

さらに、雨天後に屋上へ上がり、排水がスムーズにおこなわれているかを確認する習慣も効果的です。

排水経路が確保されていれば、シート防水本来の性能も持続しやすくなります。

信頼できる業者をみつけよう

防水工事の成否は、使用する材料以上に「誰が施工するか」で大きく変わります。

信頼できる業者を選ぶポイントは下記の4点です。

  • 防水工事の専門資格(例:防水施工技能士)を有しているか
  • 施工実績が豊富かどうか
  • 見積書が明確であるか
  • 保証内容がしっかりしているか など

ホームページに施工事例が掲載されていたり、事前調査に丁寧に対応してくれる業者であれば、信頼度は高いと判断できます。

相見積りを取り、価格だけでなく対応力や提案内容を比較して選ぶと、施工後のトラブルも防ぎやすくなるでしょう。

まとめ|雨漏りは放置せず早めにシート防水の点検・補修を

シート防水は、屋上や陸屋根の雨漏りを防ぐ有効な手段ですが、紫外線や熱、外的要因によって劣化は避けられません。

小さな破れや剥がれでも放置すれば被害が拡大し、結果的に大規模な改修が必要になるでしょう。

だからこそ、10年を目安に点検を受け、必要に応じた補修をおこなうことが重要です。

また、ドレン清掃や排水確認など、日常的なメンテナンスも予防には欠かせません。

雨漏りは「放置せず、備える」ことで建物の寿命を延ばせます。

適切な時期に専門業者へ相談し、早期対応を心がけましょう。

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