陸屋根は、フラットな構造ゆえに雨水が溜まりやすく、こまめなメンテナンスが欠かせません。
劣化や雨漏りを放置すると、建物全体の寿命を縮める恐れもあります。
この記事では、陸屋根に使われる主な防水工法や、定期的な点検・補修の目安、DIYでできる範囲と注意点をわかりやすく解説します。
費用相場や見積もり時の注意ポイントも紹介するので、安心して長く快適に屋根や屋上を維持したい方はぜひ参考にしてください。
陸屋根の特徴と定期メンテナンスが必要な理由

陸屋根(りくやね)とは、傾斜がほとんどなく平らな形状をした屋根のことです。
近年は屋上スペースを有効活用できることから、住宅やマンション、店舗などでも広く採用されています。
ただ、陸屋根は傾斜がないことから勾配屋根のように雨水が自然に流れ落ちにくいため、排水設備や防水層によって雨水をコントロールする構造になっています。
平坦な構造ゆえに雨水が滞留しやすく、紫外線や気温変化の影響を直接受けやすいところが弱点です。
防水層が劣化すると雨漏りの原因となり、建物内部の鉄筋腐食や断熱性能の低下を招くおそれもあります。
そのため、陸屋根では定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
防水層のひび割れや膨れ、ドレン(排水口)の詰まりなどを早期発見し補修すれば、結果的に修繕費用を抑え、建物全体の寿命を延ばすことにつながります。
陸屋根に使われる4つの防水工法と特徴

陸屋根の防水性を長く保つための防水工事には、いくつかの方式があり、それぞれ施工方法や費用、耐久性が異なります。
工法の特徴を理解しておくことで、メンテナンス時に「補修で済むのか」「全面改修すべきか」を判断しやすくなります。
代表的な4つの防水工法は、下表のとおりです。
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工法 |
主な特徴 |
メリット |
デメリット |
単価の目安 |
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ウレタン防水 |
液状材料を塗布し一体成形 |
継ぎ目がなく複雑形状に対応 |
表面が劣化しやすく定期塗り替えが必要 |
約4,000~6,500円 |
|
シート防水 |
シートを貼る乾式工法 |
工期が短く仕上がり安定 |
継ぎ目・端部がめくれやすい |
約5,000~7,000円 |
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FRP防水 |
樹脂+ガラス繊維を重ねる |
高強度・耐摩耗性・耐薬品性 |
大面積には不向き |
約4,000~8,000円 |
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アスファルト防水 |
伝統的な防水工法 |
長寿命・信頼性が高い |
重量・コスト・施工手間が大きい |
約5,500~8,000円 |
①:ウレタン防水:密着性が高く複雑な形状に対応
ウレタン防水は、液状の防水材を塗り重ねて膜をつくる「塗膜防水」です。
凹凸のある屋上や入隅(※)など、複雑な形状にも施工しやすいのが特長です。
※入隅(いりすみ):壁や板が出会う場所で「内側の隅」のこと。家の内側から見て、凹んでいる部分。
継ぎ目がないため、施工ムラが少なく雨漏りリスクを低減できます。
ただし、紫外線や風雨により表面が劣化しやすく、5〜7年ごとのトップコート塗り替えが必要です。
柔軟性と密着性に優れている一方で、定期的なメンテナンスを怠ると性能が低下します。
費用と性能のバランスが良く、住宅や中小規模建物で最も多く採用されています。
②:シート防水(塩ビ・ゴム):耐久性が高く工期が短い
シート防水は、工場で製造された塩化ビニル(塩ビ)や合成ゴムのシートを貼り付けて防水層をつくる方法です。
均一な厚みが保てるため施工ムラが少なく、工期も短くコストパフォーマンスに優れています。
塩ビシートは紫外線や熱に強く、ゴムシートは伸縮性に優れているのが特徴です。
一方で、端部のめくれやシール部分の劣化による雨漏りリスクがあり、点検と補修を定期的におこなう必要があります。
軽量で改修時にも適しており、陸屋根リフォームにも多く採用されています。
③:FRP防水:強度と耐摩耗性に優れる
FRP(繊維強化プラスチック)防水は、液体樹脂とガラス繊維を組み合わせて硬化させる防水工法です。
非常に強度が高く、耐摩耗性・耐薬品性・耐久性に優れています。
住宅のバルコニーや小面積の屋上で特に人気の工法です。
ただし、熱伸縮に弱いため大面積の屋上には向きません。
硬化後はメンテナンス性が低く、ひび割れが発生した場合は部分補修が難しいというデメリットもあります。
美観と強度を重視したい場合におすすめの防水工法です。
④:アスファルト防水:大型建築物で多用される長寿命タイプ
アスファルト防水は、長年の実績を持つ伝統的な工法です。
アスファルトを溶かして何層にも積み重ねる「熱工法」や、バーナーでシートを溶かす「トーチ工法」など、現場条件に応じて多様な施工方法が選べます。
耐用年数が15〜25年と長く、公共施設やマンションの屋上など大型建築物で多く採用されています。
一方で、重量がありコストも高め、施工時に煙や臭気が出やすい点がデメリットです。
陸屋根の各防水工事の詳しい特徴や、費用を安く抑える方法などが知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
【関連記事】陸屋根の防水工事の種類と費用を抑える方法・防水効果を長持ちさせるポイントを解説
陸屋根メンテナンスの周期とタイミング

陸屋根の防水層は、工法によって寿命が異なります。
どの工法もトップコートの再塗り替えを5年前後ごとにおこない、防水層自体は10〜25年程度で改修が必要になるのが一般的です。
主な防水工法別のメンテナンスサイクルは、以下のとおりです。
|
工法 |
トップコート塗り替えの目安 |
防水層改修の目安 |
備考 |
|
ウレタン防水 |
約5年 |
約8~10年 |
表面が劣化しやすく、トップコート更新が重要 |
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シート防水 |
約5年 |
約10~20年 |
継ぎ目・端部の点検が必須 |
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FRP防水 |
約7〜10年 |
約10~15年 |
紫外線に強いが、ひび割れに注意 |
|
アスファルト防水 |
約10年 |
約15~25年 |
長寿命だが、施工コスト高め |
劣化を放置すると、本来トップコート塗り替えで済むはずの軽微な補修が、全面改修に発展するケースもあります。
早期発見・早期対応が、結果的に費用を抑える最大のポイントです。
劣化サインと点検チェックスリスト

陸屋根は常に日差しや雨風にさらされているため、劣化の進行が早い部位です。
小さな異変を見逃さず、早期に対応できるかどうかが長寿命化の分かれ道になります。
- 見た目でわかるサイン:ひび割れ・膨れ・白華(はっか)・色あせなど
- 部位別要注意ポイント:ドレン周りやパラペット・立上り部など
- 点検の最適なタイミング:雨上がり翌日/乾燥期/台風後
順に説明します。
見た目でわかるサイン:ひび割れ・膨れ・白華(はっか)・色あせなど
陸屋根の防水層の表面が変色したり、細かいひびや膨れが見られる場合は、劣化の初期サインです。
紫外線や雨水によってトップコートが劣化し、防水性能が低下し始めています。
特に「白華(はっか)」は、水分が内部に浸透して蒸発する際、表面に白い結晶が浮き出る現象で、防水層内部への浸水が始まっているサインです。
この段階で発見できれば、再塗装などの軽微な補修で対応できる可能性が高いでしょう。
部位別要注意ポイント:ドレン周りやパラペット・立上り部など
雨水を排出するドレン(排水口)は、ゴミ詰まりや接着部の劣化が起きやすく、雨漏りの原因の約半数を占めるといわれています。
また、パラペットや立上り部はシートの継ぎ目やウレタンの端部が傷みやすく、亀裂や剥がれが生じやすい箇所です。
これらは外見では軽度に見えても、内部で防水層が断裂していることがあります。
DIYでの補修は難しく、かえって悪化させるリスクもあるため、防水専門業者による定期点検が安心です。
「パラペット」に関する詳しい情報は、下記記事をご覧ください。
【関連記事】パラペットとは?陸屋根での役割|メリット・デメリット、防水工事費用を解説
点検の最適なタイミング:雨上がり翌日/乾燥期/台風後
点検は、タイミングを見極めておこなうことが大切です。
雨上がり翌日は、水溜まりや染み跡などを確認しやすく、実際の排水状況を把握できます。
乾燥期(秋〜冬)は塗膜やシートの状態を見極めやすく、補修にも適した季節です。
また、台風や積雪後は強風や重量による損傷が生じやすいため、できるだけ早く専門業者にチェックを依頼しましょう。
定期的な点検を習慣化すれば、突発的な雨漏りを未然に防げます。
雨漏り対策の基本|修理だけでなく予防メンテナンスを考えよう

陸屋根は構造上、水が滞留しやすく、雨漏りのリスクが高い屋根形状です。
「雨漏り=防水層の終わり」と誤解されがちですが、実際には早期発見と適切なメンテナンスで長寿命化が可能です。
ここでは、応急処置・本格補修・放置リスクの3つの視点から、効果的な雨漏り対策を解説します。
- 雨漏り発生時の応急修理(シーリング充填等)とその限界
- 原因調査から本格補修までの流れ
- 雨漏りを放置した場合の追加損傷と高額修繕リスク
順にみていきましょう。
雨漏り発生時の応急修理(シーリング充填等)とその限界
雨漏りが発生した際、シーリング材や防水テープを使った応急処置は、一時的に水の侵入を止めるのに有効です。
しかし、これは根本的な修理ではなく「延命処置」にすぎません。
雨漏りの原因が防水層の破断やドレン(排水口)部の劣化にある場合、表面を塞いでも再発する可能性が高いです。
応急処置後は必ず、専門業者による原因調査と根本修繕をおこなうことが重要です。
陸屋根で雨漏りが発生した場合の具体的な対処法は、下記記事をご覧ください。
【関連記事】【陸屋根の雨漏り対処法】応急措置の方法や修理費用を抑えるポイントも解説!
原因調査から本格補修までの流れ
雨漏り修繕では、まず原因の特定が最も重要です。
一般的には目視点検から始まり、必要に応じて散水試験や赤外線カメラ診断を実施して、水の侵入経路を特定します。
原因を明確にしたうえで、防水層の剥離や破断部を改修します。
工事前に「どの範囲まで修繕するのか」を施工業者と共有しておくことで、後からの追加費用やトラブルを防げるでしょう。
雨漏りを放置した場合の追加損傷と高額修繕リスク
雨漏りを放置すると、見えない部分で深刻な損傷が進行します。
コンクリート内部の鉄筋が錆びて膨張し、ひび割れや剥離が拡大します。
また、断熱材や内装材が劣化して建物全体の寿命を縮める原因にもなるでしょう。
結果として、部分補修で済んだはずの工事が全面改修に発展し、費用が3〜5倍(例:20万円から100万円以上)に膨らむケースも珍しくありません。
雨漏りを未然に防ぐには、日常点検と定期メンテナンスを組み合わせることが最も確実な対策といえます。
DIYでできる陸屋根メンテナンスと注意点(やってはいけないこと)

陸屋根のメンテナンスは、一部の軽作業であればDIYでも可能です。
しかし、防水層の扱いを誤ると、かえって雨漏りを悪化させるリスクがあります。
ここでは「自分でできること」と「絶対にやってはいけないこと」を分けて解説し、安全かつ効果的なメンテナンスのポイントを紹介します。
- DIY可能な作業:清掃・ドレンつまり除去・軽微トップコート補修
- 避けるべきDIY:防水層の全面補修・立ち上り部の処理・下地改変など
- DIY失敗のリスク:保証消失・雨漏り再発
順にみていきましょう。
DIY可能な作業:清掃・ドレンつまり除去・軽微トップコート補修
まず、落ち葉や砂埃の清掃は、誰でも安全にできる基本的なメンテナンスです。
排水口(ドレン)にゴミが詰まると、水溜まりが発生し、雨漏りの直接原因になるため、こまめに除去しましょう。
また、軽度のトップコート(表面保護塗膜)の劣化であれば、DIYでの再塗装も可能です。
ただし、塗料の種類や塗布量、乾燥時間を誤ると、密着不良を起こして剥離する場合があるため、正しい材料と手順の確認が必要です。
避けるべきDIY:防水層の全面補修・立ち上り部の処理・下地改変など
防水層そのものの補修や、立ち上り部分・下地の処理は専門的な施工技術が必要です。
ウレタンやシートの接着を誤ると、層の内部に隙間が生じて浸水を招く恐れがあります。
また、下地を削ったり補修剤を無理に塗り重ねたりすると、既存防水層を破壊しかねません。
一度でも誤った処置をすると、メーカーや施工業者の保証が無効になるケースが多く、結果的に修理費が高額になることがあります。
DIY失敗のリスク:保証消失・雨漏り再発
DIYでの補修は一見コストを抑えられるようにみえますが、再発率が高いのが現実です。
防水層に生じた小さな隙間から再び水が浸入し、数か月後に雨漏りが再発するケースも少なくありません。
さらに、DIYでの施工不良が原因の場合は保証が適用されず、再施工費用がすべて自己負担になるリスクもあります。
陸屋根の防水工事は、下地処理からトップコートまで工程が多く、経験と知識が不可欠です。
不安がある場合は無理をせず、防水専門である、弊社「翔和」へ相談してください。
陸屋根メンテナンスの費用相場|修理・塗り替え・全面改修の目安

陸屋根のメンテナンス費用は、工事の規模や劣化の状態によってさまざまです。
軽微な補修で済むケースもあれば、防水層全体の改修が必要な場合もあります。
ここでは、それぞれにかかる費用目安を整理し、見積もり時の注意点もあわせて解説します。
- 小規模修理(雨漏り・部分補修)の費用目安
- トップコート塗り替え(再防水)の費用目安
- 全面メンテナンス・防水改修工事の費用目安
- 見積もり時に注意すべきポイントと追加費用リスク
順にみていきましょう。
小規模修理(雨漏り・部分補修)の費用目安
雨漏りや部分補修などの小規模修理は、早期発見によって費用を抑えられる代表的なケースです。
ドレン部の詰まりやシーリングの切れなど、局所的な劣化を補修する内容が中心になります。
|
修理内容 |
費用目安(税込) |
|
ドレン部補修 |
約3~5万円 |
|
シーリング補修 |
約1~3万円 |
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雨漏り原因・調査 |
約5~10万円 |
この段階での修繕なら、最小限のコストで被害の拡大を防止できます。
トップコート塗り替え(再防水)の費用目安
防水層そのものが健全であれば、表面のトップコートを塗り替えるだけで防水性を回復できます。
ウレタン・シート防水の再塗装は1平米あたり1,800〜2,200円程度で、30平米の屋上なら約5〜7万円前後が目安です。
塗り替えのタイミングを逃さなければ、全面改修よりもはるかにコストを抑えられます。
全面メンテナンス・防水改修工事の費用目安
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工法 |
単価の目安 |
30平米の総額目安 |
100平米の総額目安 |
備考 |
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ウレタン防水 |
約4,000〜6,500円 |
約32〜40万円 |
約80〜90万円 |
陸屋根住宅に最も多い |
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シート防水 |
約5,000〜7,000円 |
約35〜42万円 |
約85〜95万円 |
工期が短く仕上がりが安定 |
|
FRP防水 |
約4,000〜8,000円 |
約32〜42万円 |
約90〜100万円 |
バルコニーや小面積向き |
|
アスファルト防水 |
約5,500〜8,000円 |
━ |
約90〜100万円 |
ビル・マンション屋上など大型建築向け |
なお、アスファルト防水は中〜大型のビル屋上などに採用される工法で、一般住宅の陸屋根ではほとんど使われません。
また、工事範囲が広いほど足場設置や下地補修も必要になるため、全体コストは規模によって変動します。
見積もり時に注意すべきポイントと追加費用リスク
見積もりを比較する際は「工事一式」という曖昧な記載には、注意が必要です。
実際には、以下のような別途費用が発生するケースがあります。
- 既存防水層の撤去費用
- 下地補修やひび割れ補修の追加費
- 足場・養生・廃材処分費
また、安さだけを基準に選ぶと、耐久性や保証内容に差が出ることも少なくありません。
複数の工法提案を比較し、施工実績・保証期間・アフター対応を確認して判断しましょう。
陸屋根の不安はプロに相談を!防水専門の翔和が徹底サポート

陸屋根は見た目の変化が少ない分、劣化の進行に気付きにくく、放置すると雨漏りや構造損傷につながります。
ただし、定期的な点検や防水メンテナンスをおこなうことで、長期的なコストを大きく抑えることが可能です。
DIYでの対応が難しい部分は、経験豊富な専門業者に相談するのが安心です。
株式会社翔和では、ウレタン防水やシート防水を中心に、建物の状態やご予算に合わせた最適なプランを提案します。
陸屋根の不安は、ぜひ防水のプロ・翔和へご相談ください。




