屋上やバルコニーでよく見られるシート防水の「浮き」や「膨れ」。
見た目は小さくても、放置すると雨水の侵入やシート破断につながり、修理費用が大きく膨らむ恐れがあります。
この記事では、浮き・膨れが起きる原因から危険度の見極め方・DIY補修の可否・専門業者がおこなう補修方法まで詳しく解説します。
早めに対処すれば被害を最小限に抑えられるため、正しい知識を持って判断しましょう。
シート防水の浮き・膨れとは?放置の危険性と違いを解説

シート防水の浮きや膨れは、一見すると小さな不具合に見えます。
しかし、原因や状態によっては雨漏りや下地劣化につながるため、早い段階で正しく見極めることが大切です。
シート防水の「浮き」と「膨れ」の違い
シート防水の「浮き」は、シートと下地の密着力が弱まり、表面がペラッと浮き上がるように見える状態です。
接着不足や経年劣化が原因となり、踏むとフワッと動くのが特徴です。
一方「膨れ」は内部に水蒸気や空気が溜まり、風船のように盛り上がる症状を指します。
雨天施工や下地の乾燥不足が主な原因で、内部に水分がある場合は再発しやすく注意が必要です。
浮きより膨れの方が劣化範囲が広がりやすいため、早めの確認が安心につながります。
放置するとどうなる?雨漏り・破断・水溜まりのリスク
シート防水の浮きや膨れを放置すると、隙間から雨水が入り込み、下地が腐食したり室内へ雨漏りが発生したりする恐れがあります。
さらに、強風でシートがめくれ上がると破断や剥離が急速に広がり、補修費用が大きく跳ね上がる点にも注意が必要です。
膨れが大きい部分では水たまりができやすく、湿気が残り続けることで劣化が加速します。
悪循環を断ち切るには、早めの点検と適切な対応が欠かせません。
シート防水に浮き・膨れが発生する5つの原因

シート防水の浮きや膨れは、必ず何らかの原因によって発生します。
特に下地の状態や施工時の条件が影響しやすく、適切に管理しなければ再発する恐れがあります。
主な原因は下記の5つです。
- 経年劣化による密着力の低下
- 施工不良(接着剤不足・プライマー不足・転圧不足)
- 下地に残った水分(雨天施工・乾燥不足)
- 建物の動き(温度変化・揺れ・下地の伸縮)
- 排水不良による水溜まりからの劣化拡大
順に解説します。
原因①:経年劣化による密着力の低下
シート防水は紫外線や気温差の影響を受け続けるため、年数が経つとシート自体が硬化し、接着剤も徐々に性能が落ちていきます。
これにより密着力が弱まり、少しの風や衝撃でも浮きが発生しやすくなる点が特徴です。
築10年以上の屋上やバルコニーでは、表面のひび割れや色あせといった初期症状が浮きの前兆になる場合があり、早めの点検が再発防止につながります。
経年劣化は避けられませんが、定期的なメンテナンスで進行を抑えられるでしょう。
原因②:施工不良(接着剤不足・プライマー不足・転圧不足)
施工時の処理不足は、初期段階で発生する浮きの大きな原因です。
接着剤の塗布量が足りない・プライマーが均一に塗られていない・転圧が不十分といった問題があると、シートが下地に密着せず、時間の経過とともに剥がれてしまいます。
新築時の施工だけでなく、改修工事でも同じリスクがあるため、施工品質の差が大きく影響します。
見た目では判断しにくいため、工事後すぐに浮きが出た場合は施工不良の可能性を疑う必要があるでしょう。
原因③:下地に残った水分(雨天施工・乾燥不足)
下地に水分が残ったままシートを貼ると、内部の水が気温上昇で蒸発し、膨れとなって表面に現れます。
特に夏場は下地温度が高くなりやすく、水蒸気の圧力で大きく盛り上がるケースも珍しくありません。
雨天時の施工や、コンクリートの乾燥不足は代表的な原因で、施工前に十分な乾燥時間を確保する必要があります。
下地に湿気が多い状態では再発する確率が高くなるため、適切な下地チェックが重要です。
原因④:建物の動き(温度変化・揺れ・下地の伸縮)
建物は、季節や気温の変化によって膨張と収縮を繰り返し、わずかに動いています。
シート防水は柔軟性がありますが、経年劣化や施工状態によっては動きに追従できず、下地との密着が弱まって浮きが生じます。
地震や強風などの揺れによってシートが引っ張られ、端部から剥がれが広がるケースも少なくありません。
特に広い屋上は温度差の影響を受けやすく、日射で膨張→夜間に収縮を繰り返すため、浮きや膨れが進行しやすい環境です。
原因⑤:排水不良による水溜まりからの劣化拡大
排水ドレンが詰まると水が溜まり続け、湿気が逃げにくい状態が続くため劣化が急速に進行します。
シートの接着剤は水分に弱く、密着力が落ちると浮きから剥がれへと発展し、やがて雨漏りにつながる危険があります。
特に、毎回同じ場所に水たまりができる場合は、下地の凹みや内部劣化が関係しているケースがほとんどです。
そのまま放置すると劣化のスピードが一気に上がるため、排水まわりの点検はとても重要です。
シート防水の浮き・膨れの危険性と緊急度の判断基準

シート防水の浮きや膨れは、見た目だけでは危険度が判断しにくい症状です。
状態によって緊急度が大きく変わるため、早めに正しく見極めることが建物を守るポイントになります。
- 軽度の浮き
- 浮きの範囲が広い
- シートのめくれ・剥がれ
- 膨れが大きい・数が多い
- 踏むとパコパコ音がする・浮きが広がっている
順にみていきましょう。
軽度の浮き|広がりがなければ緊急度は低いため様子を見る
シートの一部がわずかに浮いている程度で、範囲も数十センチ以内に収まっている場合は、急いで補修しなくても大きな問題にはなりにくい症状です。
ただし、放置すると広がる可能性はあるため、定期的に状態を確認しながら進行の有無をチェックしましょう。
特に、季節の変わり目は温度差で浮きが大きくなることがあるため、早い段階で変化に気付けるようにしておくと安心です。
浮きの範囲が広い|雨漏りにつながる恐れがあり早期補修が必要
浮きが複数箇所に広がっている、または1m以上の範囲で確認できる場合は、雨水が侵入しやすい状態になっています。
範囲が大きいほど接着力が弱まり、風でめくれやすくなるため、早めの補修が必要です。
部分補修で対応できるケースもありますが、浮き方によってはシート内部まで劣化が広がっている可能性があり、根本的な補修が必要になる場合があります。
早めに専門業者へ相談すれば、被害を最小限に抑えられるでしょう。
シートのめくれ・剥がれ|雨水侵入の危険が高く即時対応が必要
シートが端部からめくれている、あるいは完全に剥がれている状態は、最も緊急性が高い症状です。
隙間から雨水が直接入り込み、短期間で下地が腐食するだけでなく、風で大きくめくれ上がるとシート全体が飛散する恐れもあります。
台風シーズンは特に被害が広がりやすく、放置すると補修では対応できず張り替えが必要になるケースもあるため、早急な対応が求められます。
膨れが大きい・数が多い|内部劣化や破裂リスクがあり注意
膨れが直径20cm以上に広がっている、もしくは複数箇所にまとまって発生している場合は、内部に水や水蒸気が溜まり続けているサインです。
特に、夏場は温度上昇で内部の空気が膨張し、風船のようにさらに大きくなることがあります。
膨れが破裂すると一気に雨水が入り、下地の劣化が急速に進む可能性があります。
こうした状態は再発のリスクも高いため、早めの点検が安心につながるでしょう。
踏むとパコパコ音がする・浮きが広がっている|DIY厳禁の危険サイン
踏むとパコパコと音がする場合は、内部が空洞になり下地まで劣化している可能性が高い状態です。
このまま無理に踏んだり押したりすると、剥がれが一気に広がり、雨水の侵入を招く恐れがあります。
さらに、内部に水が残ったままのケースでは、DIYで穴を開けたり膨れを押しつぶしたりすることで状態が悪化し、修理費用が急激に増えるリスクも否定できません。
危険サインが見えるときは、触らずに専門業者へ相談するのが最も安全です。
シート防水の浮き・膨れの補修はDIYで可能?

シート防水の浮きや膨れは、見た目より複雑な原因が潜んでいることが多く、DIYで完全に直すのは困難です。
応急処置は可能ですが、根本的な改善には限界があるため注意が必要です。
DIYでできるのはあくまで応急処置だけ
DIYでおこなえる対応は、あくまで一時的に雨水の侵入を抑えるための応急処置に限られます。
市販の防水テープやシーリング材を使えば、表面の隙間をふさぐ程度の補修は可能ですが、シートを下地へ完全に密着させる作業は家庭用の道具では再現できません。
浮きや膨れの根本原因は、内部の水分や密着不足にあるため、応急処置だけでは再発しやすいうえに劣化が進む恐れがあります。
あくまで「時間を稼ぐ対応」と考えるのが現実的です。
DIYではできない作業
シート防水の浮きや膨れを根本から改善するためには、専用の接着剤やプライマー、強い圧力を加える転圧ローラーなど、専門的な道具が欠かせません。
これらの作業は、均一な圧力調整や下地処理が必要となるため、一般のDIYでは対応が難しい領域です。
表面だけを補修した場合でも、内部に湿気が残っていると短期間で再び浮きや膨れが発生しやすく、問題が繰り返される可能性があるでしょう。
耐久性を確保するには、専門的な施工が前提になります。
DIYで悪化しやすい危険行為
膨れに穴を開けて空気や水を抜こうとすると、内部の水が逆流し、下地へさらに浸み込む恐れがあります。
無理に接着剤を流し込む行為も危険で、下地が湿ったまま固化すると腐食が進行しやすく、後の補修範囲が大きくなる原因です。
また、浮いた部分を押しつぶして無理に密着させようとすると、シートが裂けたり端部の剥がれが広がったりする場合もあります。
こうした行為は状態の悪化につながるため、避けた方が安心です。
専門業者による本格的な補修方法

シート防水の浮きや膨れが進行している場合は、DIYでは改善できないため専門業者による本格的な補修が必要です。
症状に合わせて工法を選ぶことで、再発を防ぎながら耐久性を確保できます。
- 密着復旧工法
- シートパッチ補修
- シート全面張り替え
- 防水層の全面改修
順に説明します。
密着復旧工法
密着復旧工法は、軽度の浮きに対しておこなう基本的な補修方法です。
浮いている部分だけを丁寧に持ち上げ、下地とシートの両方に専用接着剤を塗布したうえで、転圧ローラーを使って密着力を回復させます。
内部に水が入り込んでいない場合に適応できる工法で、比較的短時間で仕上がる点が特徴です。
ただし、下地が湿っている場合や、広範囲の浮きには対応できないため、事前の診断が重要になります。
シートパッチ補修
シートパッチ補修は、破れや劣化が限定的な範囲にとどまっている場合に有効な部分補修の工法です。
問題のある部分を切り取り、新しいシートを上から重ねて溶着または接着して仕上げます。
既存シートとの重なり部分をしっかり処理すれば、防水性を確保しながら比較的低コストで補修できるのがメリットです。
ただし、下地の腐食が進んでいる場合は、パッチ補修では十分な耐久性を確保できないため、他の工法が必要になるケースもあります。
シート全面張り替え
シート全面張り替えは、広範囲の浮きや破断が見られる場合、または経年劣化でシート全体の性能が低下している場合におこなう工法です。
既存のシートをすべて撤去し、下地を整えたうえで新しいシートを全面に貼り直します。
表面だけを補修する方法とは異なり、防水層全体をリセットできるため、長期的な耐久性を確保しやすい点がメリットです。
下地の状態によっては、追加補修が必要になるケースもあるため、事前調査が欠かせません。
防水層の全面改修
防水層の全面改修は、下地の腐食が進行している場合や、内部に大量の水分が残っている重症ケースに適用される大規模な工事です。
既存の防水層を撤去したうえで下地の補修をおこない、建物の状態に合わせてウレタン防水や通気緩衝工法など、別の工法へ切り替えることもあります。
単なるシートの張り替えでは直しきれない下地の腐食や水分侵入も、全面改修なら根本から補修できます。
そのため、防水性能を大きく回復しやすい工事です。
劣化が進んでいる建物では、最も確実な選択肢になるでしょう。
シート防水の浮き・膨れに対する補修費用の目安

シート防水の浮きや膨れは、症状の程度によって必要な補修方法と費用が大きく変わります。
ここでは状況に応じた費用の目安を紹介します。
- 応急処置の費用の目安
- 部分補修の費用の目安
- 大規模工事(張り替え・全面改修)の費用相場
順にみていきましょう。
応急処置の費用の目安
軽度の浮きや小さな破れに対して行う応急処置は、雨水の侵入を一時的に避ける目的のため、費用は比較的安く済む傾向があります。
コーキング材での簡易補修や、防水テープによる応急対応であれば数千円〜1万円程度が目安です。
ただし、これは根本的な改善ではなく、あくまで「時間稼ぎ」の処置にすぎません。
放置すると症状が進行し、後の工事が大規模化しやすいため、早めの専門調査と本格補修が安心です。
部分補修の費用の目安
浮きや破れが局所的で、シート全体には大きな問題がない場合は部分補修が可能です。
一般的には1〜3万円程度が目安で、補修範囲の広さや下地の状態により金額が変わります。
軽度の浮きであれば密着復旧工法、局部的な破れであればシートパッチ補修が選ばれることが多いです。
なお、下地が傷んでいる場合は追加処理が必要になることもあり、費用が上がるケースがあります。
症状が限定的なうちに対応すれば、コストを抑えやすくなるでしょう。
大規模工事(張り替え・全面改修)の費用相場
浮きや膨れが広範囲に及ぶ場合や、下地の腐食が進んでいる場合は、シートの全面張り替えや防水層全体の改修が必要です。
費用は5,000〜7,000円/平米が一般的な相場で、施工面積が広いほど総額は大きくなります。
建物状況などにより変動しますが、例えば200~300平米ほどの平場なら150〜300万円程度が目安です。
シート防水の具体的な施工手順や、より詳しい費用相場については、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】シート防水の施工手順を解説!費用相場や見落としがちな劣化症状も紹介
さらに、ウレタン防水やFRP防水への工法変更を選ぶと費用が変わることもあり、建物の状況と目的に応じた工法選びが重要です。
シート防水の上からウレタン防水へ施工する場合の手順や注意点に関しては、下記記事をご覧ください。
【関連記事】シート防水の上にウレタン防水は施工可能?重ね塗りの注意点やメリット・手順を解説
まとめ|浮き・膨れは早期対処が重要!確実な補修は専門業者へ相談を

シート防水の浮きや膨れは、小さな異変でも放置すれば雨漏りや下地の腐食につながり、結果として大規模な改修が必要になる場合があります。
DIYでできるのは応急対応までで、密着回復や下地処理などの本格補修は専門業者でなければ対応できません。
早めに診断し適切な補修をおこなえば、工事規模が膨らむ前に費用を抑えることが可能です。
翔和では、現場調査から最適な工法の提案まで実績に基づく対応を徹底しており、無理のない計画で安心できる防水改修を進められます。




