陸屋根は、シンプルで洗練された外観を持ち、屋上利用や太陽光発電設置など多くのメリットがあります。
一方で、雨漏りのしやすさや断熱性の低さから後悔する声も聞かれます。
後悔を避けるためには、特徴を正しく理解し、適切なメンテナンスや施工が大切です。
この記事では、主に下記の4点を解説します。
- 陸屋根の基礎知識
- 陸屋根のメリット・デメリット
- 後悔を防ぐための防水・断熱対策
- 陸屋根の防水メンテナンスの種類と費用相場
陸屋根で後悔しないために、ぜひ最後までご覧ください。
陸屋根に関する基礎知識
陸屋根は、現代建築に多く採用される屋根形状であり、戸建て住宅にも広がりつつあります。
まずは陸屋根の基本的な特徴を理解し、屋上との違いなどを正しく把握しましょう。
陸屋根とは?
陸屋根とは、屋根の面がほぼ水平で傾斜がほとんどない形状の屋根を指します。
ビルやマンションなど、鉄筋コンクリート造の建物に多く採用されてきましたが、近年はデザイン性の高さから戸建て住宅でも人気が高まっています。
シンプルでスタイリッシュな外観を演出できるため、モダンな住宅設計との相性がよい点も魅力です。
加えて、屋根が平らなため屋上利用や太陽光発電の設置がしやすいなど、実用性にも富んでいます。
陸屋根と屋上の違い
陸屋根と屋上は、同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。
陸屋根は、屋根の形状そのものを指すのに対し、屋上は、人が上がって利用するスペースを意味します。
そのため、陸屋根であっても必ずしも屋上として活用できるとは限りません。
例えば、陸屋根には手すりが設置されないケースも多く、屋上利用を想定した場合は安全面の確保が不可欠です。
違いを理解しておくと、設計やメンテナンス時に適切な判断ができるでしょう。
陸屋根の6つのメリット
陸屋根は見た目の美しさに加え、点検やメンテナンスの容易さ、屋上活用の自由度など、暮らしに直結する利点が豊富です。
ここでは、代表的な6つのメリットを紹介します。
- デザイン性に富んでいる
- メンテナンスがしやすい
- 屋根を屋上として有効活用ができる場合がある
- 風の影響をほとんど受けないため台風などの自然災害に強い
- 室内スペースを広く使える
- 太陽光発電を設置しやすい
順にみていきましょう。
①デザイン性に富んでいる
陸屋根の魅力は、フラットな形状がもたらすスタイリッシュな外観です。
勾配のある屋根に比べて、直線的でシンプルな印象を与えるため「モダン」「都会的」などのデザインを求める方に適しています。
外観全体がすっきりと仕上がり、建物の印象を洗練させられる点も特徴です。
また、素材や外壁との組み合わせによって個性的なデザインを演出できるのも強みです。
特に、住宅密集地では、他の家と差別化を図れる外観を実現できるため、近年では戸建てでも人気が高まっています。
②メンテナンスがしやすい
陸屋根は平らな形状のため、雨どいの点検や清掃、屋根材の劣化確認などの作業をしやすいのがメリットです。
勾配屋根に比べて足場を最小限に抑えられるので、防水工事や塗装工事を依頼する際のコスト削減にもつながります。
さらに、屋根に上がる作業も比較的安全性が高く、専門知識がなくても簡単な清掃や落ち葉除去などを自分でできるのも利点です。
メンテナンス性の高さは、長期的な住まいの維持費を抑えるうえで大きな役割を果たします。
③屋根を屋上として有効活用ができる場合がある
陸屋根はフラットな形状を活かし、物干しスペースや屋上庭園、太陽光パネルの設置など、多用途に活用できる可能性があります。
限られた敷地を効率よく使いたい住宅では、屋上の存在が日常生活にプラスの価値を与えてくれるでしょう。
ただし注意点として、陸屋根そのものは人や物を載せる前提で設計されていない場合も多いため、屋上利用を計画するなら荷重に耐えられる構造設計や追加工事が必要です。
安全性を確保してこそ、快適で安心できる屋上活用が可能になります。
④風の影響をほとんど受けないため台風などの自然災害に強い
勾配屋根の場合、強風によって瓦やスレート材が飛ばされたり破損したりするリスクがあります。
一方、陸屋根は平らな構造のため、風の影響を受けにくいのが特徴です。
屋根材のひび割れや、剥がれなどの被害を最小限に抑えられるので、台風や暴風が多い地域でも安心感があります。
特に、日本のように自然災害が多い環境では、屋根が飛ばされるリスクを減らせる点は大きなメリットといえるでしょう。
災害への備えを重視する方にとって、陸屋根は有力な選択肢になります。
⑤室内スペースを広く使える
陸屋根は勾配がないため、屋根裏の空間が発生しません。
その分、天井を高く設計でき、開放感のある室内空間を確保できます。
屋根裏収納が不要な場合は、部屋全体をより広く使える点が大きな魅力です。
また、天井が高いため風通しや採光の工夫がしやすく、快適な住環境を整えることにもつながります。
住宅の居住性を高めたい方や、限られた延床面積を有効活用したい方にとって、陸屋根の採用は大きなメリットとなるでしょう。
⑥太陽光発電を設置しやすい
陸屋根は屋根全体がフラットであるため、太陽光パネルを効率的に設置できます。
勾配屋根では、方角や角度によって発電効率が左右されますが、陸屋根なら設置角度を自由に調整でき、日照条件に合わせて最適な発電効率を確保しやすい点がメリットです。
さらに、全面にパネルを配置できるため、広い発電面積を確保できるのも強みです。
外観を損なわずに設置できる点も魅力で、エコ志向や光熱費削減を重視する家庭にとっては、陸屋根の大きな利点といえます。
陸屋根で後悔しがちな3つのデメリット
陸屋根は、デザイン性や利便性で魅力的ですが、実際に暮らし始めると意外な欠点に気付き後悔するケースも少なくありません。
ここでは、特に注意したい3つのデメリットを解説します。
- 雨漏りがしやすい
- 定期的なメンテナンスが必要
- 断熱性が低い
順にみていきましょう。
①雨漏りがしやすい
陸屋根は傾斜がないため、雨水が自然に流れにくい構造です。
その結果、屋根表面に水分が長時間とどまりやすく、防水層が劣化すると雨漏りにつながります。
また、瓦やスレートのような屋根材がなく、防水層そのものが屋根を守っている点も弱点です。
特に排水口(ドレン)が詰まると水があふれやすく、被害が大きくなる恐れがあります。
雨漏りは早めの発見と対処が重要で、放置すると室内のカビや構造材の劣化に直結します。
陸屋根の、雨漏りに対する具体的な原因や修理の方法に関しては、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】【陸屋根の雨漏り対処法】応急措置の方法や修理費用を抑えるポイントも解説!
②定期的なメンテナンスが必要
陸屋根を安全に使い続けるには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
代表的なものは、5年程度を目安としたトップコートの塗り替えです。
防水層の表面を保護し直すことで劣化を遅らせ、雨漏りのリスクを減らせます。
また、ドレン(排水口)の点検や清掃も重要です。
落ち葉やゴミが詰まると水が溜まり、雨漏りの原因になります。
さらに、防水層自体の改修は10〜15年ごとに必要となるのが一般的です。
つまり、陸屋根は初期費用だけでなく、将来的に維持管理費用が発生する点を理解しておく必要があります。
③断熱性が低い
陸屋根は屋根裏スペースがないため、日射の熱を直接室内に受けやすい構造です。
そのため、夏場には最上階の部屋が暑くなりやすく、冷房費がかさむ要因となります。
冬場も外気の影響を受けやすく、寒暖差が大きくなる点がデメリットです。
勾配屋根では、屋根裏の空間が緩衝材のような役割を果たしますが、陸屋根にはそれがないため、断熱材や遮熱塗料の工夫が必要になります。
対策を取らないと、快適性を損なうだけでなく、冷暖房の効率が悪くなり、光熱費の負担が増える可能性があります。
陸屋根で後悔しないための3つの対処法
陸屋根は、適切に設計・施工し、定期的なメンテナンスをおこなえば大きな魅力を発揮できます。
後悔を防ぐために押さえておきたい具体的な対処法は、下記の3点です。
- 適切な防水工法を選んでメンテナンスをおこなう
- 信頼できる防水施工業者を選ぶ
- 断熱・遮熱対策をする
順に説明します。
①適切な防水工法を選んでメンテナンスをおこなう
陸屋根は、防水層が屋根の寿命を左右するため、建物の構造や立地条件に応じた防水工法の選択が欠かせません。
代表的な工法には、下記の3つがあります。
- 耐久性とコストバランスのよいシート防水(塩ビ・ゴム系)
- 複雑な形状にも対応できるウレタン塗膜防水
- 強度の高いアスファルト防水
選んだ工法に合わせて、定期的なトップコート塗り替えや排水口の点検を実施すれば、防水性能を維持できます。
適切な工法選びと計画的なメンテナンスが、雨漏りや劣化を防ぐ最大のポイントです。
②信頼できる防水施工業者を選ぶ
陸屋根は構造上、防水や排水処理の精度が直接住環境の快適性につながります。
そのため、施工実績が豊富で技術力の高い業者選びが重要です。
具体的には、下記の3点をチェックしましょう。
- 見積もりの内訳が明確であるか
- 過去の施工事例を確認できるか
- アフターフォロー体制が整っているか
また、相見積もりを取り比較するのも有効な方法です。
信頼できる業者選びの、より具体的なポイントに関しては、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】シート防水の耐用年数(寿命)は?屋上・ベランダの防水を長持ちさせる秘訣を解説!
③断熱・遮熱対策をする
陸屋根は直射日光を受けやすいため、夏は最上階の室温が上がりやすい傾向があります。
その対策として、遮熱塗料を塗布すれば、屋根表面温度を下げ、室内の温度上昇を防げるでしょう。
また、断熱材を外側に施工する「外断熱方式」を採用すれば、夏の暑さだけでなく冬の冷気も軽減できるため、一年を通じて快適な環境の維持が可能です。
設計段階から断熱性能を考慮し、適切な遮熱・断熱対策を施せば、快適性と省エネ効果を同時に得られるでしょう。
陸屋根の防水メンテナンスの種類と費用
陸屋根は、防水層が建物を守る役割を担っているため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
防水工事の方法には、いくつか種類があり、それぞれ特徴や費用が異なります。
ここでは、代表的な工法と費用相場を解説します。
陸屋根の防水・メンテナンス工事は主に3種類
陸屋根の防水工事は、大きく分けて下記の3種類があります。
- シート防水
- 塗膜防水
- アスファルト防水
シート防水は、塩ビやゴム製のシートを貼り付ける工法で、耐久性とコストバランスに優れています。
塗膜防水は、液状のウレタンを塗布して防水層を形成する方法で、複雑な形状にも対応できる柔軟さが特徴です。
アスファルト防水は、耐久性が高く長期使用に適していますが、施工時の手間や重量が大きくなる傾向があります。
建物の構造や環境条件に合わせて、最適な工法を選ぶことが長持ちの秘訣です。
種類ごとの費用相場
防水工事の費用は工法によって異なります。
おおよその目安は下表のとおりです。
防水の種類 | シート防水 | 塗膜防水 | アスファルト防水 |
---|---|---|---|
1平方メートルあたりの単価 | 3,000~7,000円 | 4,000~8,000円 | 4,500~9,000円 |
工事範囲や既存防水層の状態によって金額は変動するため、複数業者から見積もりを取っての比較が重要です。
費用を抑えながら防水効果を長持ちさせるコツについては、下記の記事もご覧ください。
【関連記事】陸屋根の防水工事の種類と費用を抑える方法・防水効果を長持ちさせるポイントを解説
陸屋根に関するよくある質問
陸屋根はメリットも多い一方で、構造上の特徴や設計の工夫が必要になるケースがあります。
ここでは、陸屋根に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 木造住宅で陸屋根は可能ですか?
- 積雪のとき陸屋根は危険ですか?
- パラペットのない陸屋根はどうなりますか?
順にみていきましょう。
Q:木造住宅で陸屋根は可能ですか?
A:木造住宅でも陸屋根の採用は可能です。
ただし、木造は鉄筋コンクリートに比べて構造強度が劣るため、本来は陸屋根に向きにくいといえます。
特に積雪地域では、雪の重みに耐えられる構造設計が不可欠です。
また、木材は水分の影響を受けやすいため、防水対策を徹底しなければ雨漏りや劣化につながります。
設計段階から耐荷重と防水をしっかり考慮すれば、木造住宅でも陸屋根を取り入れることは十分可能です。
Q:積雪のとき陸屋根は危険ですか?
A:陸屋根は勾配がないため、雪が自然に滑り落ちにくい構造です。
その点で、勾配屋根のように雪の落下による事故リスクは少ないといえます。
さらに、多くの陸屋根には排水設備が備わっているため、積もった雪が時間をかけて溶け、排水口を通じて下に流れていく仕組みになっています。
ただし、大量の積雪で排水口が詰まると水が溜まる原因になるため、定期的な点検と清掃が大切です。
適切に維持管理すれば、積雪時でも危険性を抑えられるでしょう。
Q:パラペットのない陸屋根はどうなりますか?
A:パラペットとは、陸屋根や屋上の周囲に設けられる立ち上がり部分です。
パラペットがない場合、屋根と外壁の高さが同じになるため、雨が降ると水が外壁を直接つたって流れ落ちます。
その結果、外壁が常に多くの雨水にさらされ、汚れや苔、藻の発生を招きやすくなります。
さらに、その状態が長く続くと、リスクとして高まるのが外壁材の劣化や雨漏りです。
「陸屋根」を採用する際は、パラペットを設けて、外壁に対する雨水の影響軽減を図りましょう。
まとめ|陸屋根には魅力が満載!後悔しないようプロの業者にメンテナンスを依頼しよう
陸屋根は、モダンで洗練されたデザインを実現でき、屋上活用や太陽光発電など多くのメリットがあります。
しかし、雨漏りしやすい構造や断熱性の弱さなどのデメリットから、適切な対策を取らなければ後悔につながる可能性もあります。
防水工法の適切な選択や、定期的な点検、断熱・遮熱の工夫をすれば、安心して快適に暮らせる陸屋根の維持が可能です。
「陸屋根」で後悔しないためには、実績豊富な専門業者に依頼し、計画的にメンテナンスをおこないましょう。