新年あけましておめでとうございます。 本年も㈱翔和は一生懸命防水工事をおこないます。
さて今回は2024年度末に施工させていただきました埼玉県川越市の公共施設屋根、塩ビシート防水工事を紹介していきたいと思います。
1.現調時の状況
現地調査日は2024年12月初旬頃で、元請け業者様より急きょご依頼をいただき屋根を塩ビシート防水で施工してほしいとのことでした
私はすぐに日程調整をおこない現地へ向かいました。
そして屋根にあがってみると、既存の防水層(ゴムシート接着)が破断してめくれあがっていました。経年劣化により接着剤の効果が弱くなり浮上ってしまったようです
既存ゴムシートも経年劣化により伸縮に耐えられず強風などで煽られて破断してしまったと思われます
新築時から一度も改修工事をおこなっていなかったようで30年近くノーメンテナンスとのことでした。
幸いなことに漏水などはしていなかったようです、ですが逆に漏水していなかったためにここまで状態が悪化してからの改修工事となってしまったとも言えます
漏水はしていなかったとはいえ、長期間既存防水層は効果を失っており建物素地が雨風にさらされていたわけで決して建物のとってよい状態とは言えません
屋根素地はしっかりと水分をふくんでしまっていますし、床から水分をふくみその影響で壁の塗装も剝がれてしまっていました
今回は、素地の状態として水分も多く含んでしまっているため、接着系の工法は避けたほうがよいと感じました
既存の防水層を撤去してから素地の水分があるていど抜けるまで乾燥が必要になるため時間がかかってしまいますし、もし水分が残っていた場合せっかく改修工事をしても
すぐに剥がれや浮きなどが発生してしまう恐れがあるため
ゴムシートの接着工法や塩ビシートの接着工法・ウレタン塗膜防水密着工法などは今回は適していません
元請け業者担当と打合せを行い今回は、塩ビシート防水での工事をご依頼いただきました。 工法は床面、機械式固定工法 立上りは下地調整処理を行った上で 接着工法となりました
塩ビシート防水の機械式固定工法とは外周を塩ビ被覆のついた鋼板をビスを使って固定し中央部にはディスク板をメーカー規定寸法で下地に固定し
塩ビシートを固定する工法です
機械式固定工法のメリットは、水分を含んだ下地や亀裂などの軽度の破損が生じている場合でも施工を行う事ができるということです。
また下地の状態に左右されにくく不陸が悪かったり既存の塗膜や防水層が残っていても施工が可能であり
幅広い建物に採用することができます
また既存防水層の上からカバー工法として施工が可能なため、既存防水層の撤去費用や廃材処分費も不要なためコストダウンが可能となります
塩ビシート防水の耐用年数は、機械式固定工法・接着工法でも共に10~15年程度です (メーカー保証は10年)
2.施工手順
塩ビシート防水の機械式固定工法の施工手順は以下のとおりです。
- 下地の確認と清掃を行い下地に重度な浮きやシワがある場合は部分的に撤去などを行い補修しておく
- 平場部に絶縁シートをシワにならないように張っていく
- 絶縁シートの上にメーカー規定寸法に準じてディスク板を固定していく
- 外周部に塩ビ鋼板を固定していく
- 平場部の塩ビシートをシワにならないように張っていく 外周に固定した塩ビ鋼板と平場塩ビシートを溶着剤や熱風器を使用して固定する
- ディスク板とシートを専用の機械を使用して熱融着して固定する
- シート継ぎ目小口部分に液状ジョイントシール材を塗布していく
実際の施工時の様子です
今回の下地は浮きや剥がれ部分が多かったため全面の既存防水シートを撤去することになりました。
さすがに既存の状態が悪すぎて機械式固定工法でもそのまま施工することができませんでした
本来定期的に点検やメンテナンスを行っていれば今回のような撤去などが不要になるため無駄なコストをかけずに改修工事を行うことができます
「まだ大丈夫だろう」「まだ雨漏りしていないし」など、そのうち工事しようと放置していると今回のように
いざ改修工事をおこなう際に大規模な工事となってしまい結局大きな費用をかけてしまうことにつながってしまうのです
まず2~3年に一度の点検を意識していただきこまめなメンテナンスを行うことが建物を長期的に健康な状態を維持することにつながると思います
次にケレンと清掃を十分に行った後に、絶縁シートを敷きこんでいきます。この時清掃を十分に行い異物などがないよう注意して
シワにならないように引っ張りながら敷きこんでいきます
絶縁シートは、既存下地や防水層の悪影響を新規塩ビシートに移行させないという役割もあるので重要な作業です
次にメーカー規定の寸法に準じてディスク板を固定していきます。この時、下地コンクリート強度や既存に防水層がある場合には断熱材の厚み及び防水層の厚みをあらかじめ
確認してから固定ビスの長さと太さを決定します
ディスク板は平場塩ビシートと熱融着し台風などの暴風にも塩ビシートが飛ばされないように耐える強度が必要なためしっかりと固定します
ディスク板の固定と並行して、入隅部分に塩ビ鋼板を固定していきます。
入隅部分の塩ビ鋼板は工法や下地の形状・下地の材質によって選定されこちらも形状・長さなどが変わってきます
今回の工事は平場が機械式固定工法で立上りは密着工法なため平鋼板(正式名称・田島ルーフィング材UP-1)を使用していきます。
あらかじめ工事着工前打合せにて、適切な材料選定を行い複雑な下地形状や下地材質の場合はメーカー担当者立合いのもとで
打合せすると良いと思います。
←ディスク板及び入隅塩ビ鋼板を固定して下地が完了した状態
次にブロワーなどを使用してホコリや異物などが残らないように十分注意して清掃します
この時異物などが残ったまま施工を進めてしまうと突起となり塩ビシートに悪影響を与えてしまうため注意が必要です。
塩ビシートは、水下側から順番に張っていき塩ビシート相互重ね幅は40~50mmになるよう隅だしなどを行い真っ直ぐに敷きこんでいきます
途中重ね幅が変わったり曲がって敷きこんでしまうと、シワやたるみの原因となるため1幅づつしっかりと確認しながら
作業を進める必要があります。
塩ビシートを張りこんでいく手順としてまず溶着剤や熱風ガンを使用して、塩ビシートと鋼板を溶着・融着していきます
その後、まず長辺方向に引っ張りながらシワやたるみのないように確認しながら溶着・融着していきます
塩ビシート相互の重ね幅40~50mmを再度確認しこちらも溶着していきます。
※塩ビシートの特徴として塩ビ鋼板や相互の重ね幅部分(40~50mm)は接着剤などで貼り付けるのではなく相互を溶剤な熱風により溶かして
一体化させるため10年後でも、接着剤などの経年劣化による剥がれなどの心配がありません。
伸縮率のよく季節による温度変化にも対応性能が高く長期的に防水性能を維持できます
また塩ビシートはメーカー工場にて品質管理され厚さや幅長さまで均一な材料が出荷されるため施工品質も均一化することができるため
塗膜防水のような施工者による品質の差が発生しにくい事も特徴です
誘導加熱装置を使用して塩ビシートとディスク板を固定
誘導加熱装置を用いて、あらかじめ下地へ固定したディスク板に塩ビシートを接合していきます
施工上の重要な部分を機械化して安定した施工品質を提供しています
※ディスク板の役割と重要性 ※メーカーは品質向上のため常に実験を行っています
風圧について
屋根に生じる風圧について
風が吹くと、屋根を持ち上げようとする力(負圧)が働きます。強風で瓦が飛ばされたり防水層がめくれあがるのは、負圧による現象です。
屋根部は(一般部)(周辺部)(隅角部)で風圧が異なります。それぞれの部分で防水層の適切な固定強度が必要です。
各メーカーでは耐風圧性にかんして様々な実験で効果を検証しています。
風洞実験
塩ビシート防水機械式固定工法は、強風時においてシートが負圧により持ち上げられ、固定部(ディスク固定箇所)に荷重が集中します。
回流式境界風洞層を用いて、風速10m/s~35m/sにおける従来工法の固定部に作用した鉛直力および水平力などの測定実験をおこなって
います。
防水シート疲労試験
塩ビシート防水機械式固定工法の場合、負圧によってシートが持ち上げられることで固定部周辺部(ディスク周り)の防水シートが疲労します。
また、鉛直方向と水平方向の力が同時に作用することで、固定部周辺部の防水シートに負担はさらに大きくなります。
鉛直方向と水平方向の力を同時に生じさせる疲労試験にて従来工法の固定部周辺部の防水シート疲労試験なども行っています
耐候性
屋外に曝露される塩ビシートは、紫外線、熱、水等の複合要因によって劣化がひきおこされます
2つの試験方法で人工的に劣化を促進させて塩ビシートの耐候性の確認を行っています
寸法安定性
防水シートは、夏季の炎天下時には表面温度が70度を超える場合もあり、厳しい熱環境に曝されます。
シートは熱劣化によって徐々に収縮し、収縮が大きいと破断してしまう場合もあります。
熱の影響による塩ビシートの収縮性を確認しました。
耐薬品性
防水層は地域によっては、亜硫酸ガスまたはこれを含む酸性雨、コンクリート中のアルカリ分、海岸地域における塩分、熱、紫外線、酸性雨、潮風
など種々の曝露環境により、機械的物性や表面状態に影響を受けます塩ビシートの耐薬品性を確認しました。
耐摩耗性
防水シートは、屋根に堆積した土や砂等によって摩耗される環境にあり、屋上を歩行用用途にしようされる場合はさらに高い
耐摩耗性が要求されます。摩耗試験による塩ビシートの耐摩耗性を確認しました。
誘導加熱装置接合状況
立上り部分は、下地調整処理をおこない十分に下地が乾燥した状態で接着剤を下地面と塩ビシート面共に塗布し貼り付けていきます
この時下地の乾燥不十分や異物、転圧不足があると接着不良や膨れ剥がれの原因になるので注意が必要です。
施工完了!
建物の雨漏り他でお悩みの方は是非、株式会社翔和にご連絡ください。
東京都江戸川区鹿骨6-1-6
TEL 03-6875-9490